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2026.10.29 分子状窒素イオンが拓く低温アンモニア合成

研究トピックス

2026.10.29 分子状窒素イオンが拓く低温アンモニア合成


 東京科学大学(Science Tokyo)総合研究院 元素戦略MDX研究センターのイーハオ・ジャン(Jiang Yihao)博士研究員、細野秀雄特命教授、北野政明教授らの研究グループは、分子状窒素イオンを内包する新物質、正方晶型の逆ペロブスカイト酸窒素水素化物B
a3AlO4-xNyHzを創製し、世界トップクラスの活性を示すアンモニア合成触媒を実現しました。

この物質の結晶構造は準安定相であるため、従来の合成指針では形成が困難でした。今回の研究では、酸化物イオン、窒化物イオン、水素化物イオンなど、性質の異なる複数種類の陰イオンを1つの結晶中に共存させる設計により、この準安定的な結晶構造を安定化することに成功しました。

本研究では、このBa3AlO4-xNyHzをアルミナナノロッドの表面に成長させることで、階層構造型の担体材料の構築にも成功しました。この担体にコバルトを担持して得られた触媒は、300℃、9気圧という温和な条件で、従来の非貴金属系触媒よりも優れた、世界トップレベルのアンモニア合成活性を示しました。

この高いアンモニア合成活性には、結晶格子内に取り込まれた分子状窒素イオン(N2)-が関わっています。

分子状窒素イオンは、通常の窒素分子(N2)と比べて窒素原子間の結合が大幅に弱いため、一般的な遷移金属触媒上の窒素分子よりも強く活性化された状態にあることが明らかになりました。さらに、この分子状窒素イオンを介してアンモニア合成が進行するという、従来とは異なる反応メカニズムが確認されました。

本研究は、複数種類の陰イオンを共存させる設計に基づいた、準安定材料の新たな創製指針を提示すると同時に、分子状窒素イオンを介した新しいアンモニア合成反応機構を明らかにするものです。本成果は、温和な条件で作動する高性能アンモニア合成触媒の開発に、新たな可能性を拓くものと期待されます。

本研究成果は、10月28日付(現地時間)で米国科学誌「Journal of the American Chemical Society」に公開されました。


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